院長 第62回秋季日本歯周病学会(福岡)にて発表

広汎型重度慢性歯周病患者に対し歯周基本治療のみで治療した1症例
(A case report of generalized severe chronic periodontitis treated with basic periodontal therapy.)

【症例概要】
患者:42歳男性
初診:2013年7月15日 
主訴:右下犬歯が腫れて動く 。
全身的既往歴:特記事項なし、喫煙歴なし 
現病歴:数年前から歯肉出血と歯の動揺があり近医で歯周治療を受けたが改善しないため当クリニックを受診した。

【検査所見】
口腔内所見:43に強い歯肉の炎症と動揺が認められた。臼歯部は6mm以上のPDが認められ、全顎的にBOP(+)、18,17,27,37,43,47は動揺度3度であった。X線所見:全顎的に歯根の1/2〜2/3の骨吸収があり、27,37,43は根尖までの骨吸収が認められた。

【診断】
広汎型重度慢性歯周炎

【治療計画】
①歯周基本治療 ②再評価 ③歯周外科 ④再評価 ⑤歯周補綴 ⑥再評価 ⑦メインテナンス

【治療経過】
①応急処置43感染根管治療・暫間固定 ②歯周基本治療TBI、27、43抜歯、全顎SRP、37感染根管治療 ④再評価⑤ 再SRP・Er-YAGレーザーを併用、47抜歯 ⑥再評価 ⑦最終補綴 ⑧再評価 ⑨SPT

【考察とまとめ】
歯周外科治療が必要な症例であったが、最大限歯を残す努力をしてほしいということと、仕事の都合で歯周外科治療を避けたいという患者の強い希望があった。それらを踏まえて歯周基本治療を行った。43の早期の固定による動揺度減少や37の歯内歯周病変は歯内療法と歯周治療により改善し、それが患者のモチベーション向上につながった。またSRPでは治らなかった部位に対し、再SRP時にEr-YAGレーザーを併用し、歯周ポケット全体を包括的に治療したことにより、歯周外科治療を行わなくても良い結果が得られたと考えられた。